百人一首ものがたり 6番 大伴家持

目次

かささぎの 渡せる橋に置く霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける

百人一首ものがたり

小倉庵にて 権中納言定家と主治医・心寂坊の対話

 心寂坊はカラスビシャクの根の皮を剥いだものを糯米と混ぜて薬研で磨っている。その傍らで一人の童子が竜の髭の芯を一本ずつ引き抜いて籠に入れていたが、不意に口に入れて急いで飲み込んだ。心寂坊は見咎めて、

「これこれ、食べてしまってはならぬ。中納言様のお咳の薬を何とする」

 奥の間かからこの様子を見ていた定家は笑って、

「腹を空かした子供を働かせてばかりいると恨まれますぞ」

「そうは申されましても、油断をしていたらみな食べられまする」

「みなは過ぎましょうが、少しは許してやりなされ・・・それより心寂坊殿、これをどうみなさるか」定家は心寂坊を側に呼んで半紙を広げた。九首書き連ねてある。

「・・・さて・・・どなた様の歌でございますか」

「それを心寂坊殿に当てていただこうと思いましてな」

「これは迷惑な・・・私ごときに何がわかりましょう」そう言いながらも心寂坊は気になって見ると、

春霞春日の里の植え小葱苗なりと言ひし柄はさしにけむ        407 

撫子がその花にもが朝な朝な手に取りもちて恋ひぬ日なけむ      408

玉の緒を沫緒によりて結べればありて後にも逢はざらめやも      763

百歳に老い舌出てよよむとも我はいとはじ恋は益とも         764

愛しきかも皇子の命のあり通ひ見しし活道の道は荒れにけり479天皇の御代栄えむと東なる陸奥山に金花咲く   4097

剣太刀いよよ研ぐべし古ゆさやけく負ひて来にしその名ぞ       4467

移り行く時見るごとに心痛く昔の人し思ほゆるかも          4483

いざ子供狂(たは)わざなせそ天地の堅めし国ぞ大和島根は      4487

「どうもこれは・・・一人の歌ではござらぬようでござりますな」

「なに故そのようにお思いなさる」

「私は無学の輩でござりますが、最初の歌と最後では、天地ほどにその心が異なっていることは分かります」

「なるほど」

「まず、先の二首と次の二首は男が女に出した恋文でござりましょう・・・次の三首と四首は男女の相聞のようでござります。特に三首目の、玉の緒を沫緒によりて結べれば・・・というが如き言い回しの巧みさからすれば、名の才女の恋歌のように見えまする。これに対して・・・百歳に老い舌出てよよむとも・・・美しいあなたが百才になって舌が出て、よぼよぼになってもそんなことはかまわない、ますますあなたに恋いこがれるばかりです、というのですから、いかにも戯けた受け答えで、一通りの歌詠みではとても詠めますまい。真心をさらけ出すかに見えて女心を捕らえるしたたかさは何とも驚き入るばかりです」

「なるほど、なるほど、して、五首目は」

「これはおそらく皇子が亡くなったのを傷んで誰かが詠んだ挽歌でござりましょう。人麻呂でしたら長歌を詠んだと思いますが人麻呂とは思えませぬし、皇子の名も皆目見当もつきかねます」

「では陸奥山に金花咲くの歌はいかがですかな」

「・・・昔、陸奥の国に金山が出て、東大寺の大仏を飾ったと聞いた事がござります。ですから、これは聖武天皇の御代に金山が出たことを祝う歌でござりますまいか」

「まことに心寂坊の申される通りでござりますな・・・で、次の剣太刀、はいかがですか」

「それがでござります。この歌と次の歌は悲壮な気がいたしますが、何故にそのように心を痛めているのか分かりかねます。また、最後の歌は他の八首とはまるで語調が異なりますし、居丈高な気配ですから、これまでの歌の主とはずいぶんと違う人でござりましょう」心寂坊がこう述べると、定家は手を拍って笑った。

「さすがは心寂坊殿、九割五分方は解いてしまわれましたぞ」

「・・・しかし歌の主は一人も分かりません」

「いいや、お分かりでござりましょう・・・人麻呂、赤人の後に出て、これほどの歌を詠める歌人はそうは多くはござりませんぞ」

「・・・では・・・もしや、大伴家持・・・」

「いかにも、心寂坊殿の申される通り、家持です。最初の二首は家持が坂上家の次女と長女に出した娉(よば)ひの歌、次の二首は紀郎女との相聞です」

「はてさて、一つの家の二人の娘に娉(よば)ひするとは・・・また紀郎女の歌はいつぞや聞いた事はありましたが、名のみを記憶して歌を知らぬ・・・何ともお恥ずかしい次第・・・しかし、家持というお方は、何とも恵まれたお人でござりまするな」

「確かに名族に生まれ、旅人を父として育ったのですから、恵まれたといえばそうも言えましょうが、むしろ彼の人生の大半は悲運の連続であったのです・・・幾たびも陰謀罪の罪に問われ、死んで後は墓を暴かれ、遺骨を隠岐に流されたのですから・・・」

「墓を暴かれるとは・・・それほどの罪を犯したのですか」

「真実は分明ではありません。しかし、心寂坊殿はどなたか大伴の氏姓を名乗るお方をご存じですか」

「・・・いいえ・・・思い当たりません」

「そうでしょうとも・・・実は、大伴の名は絶えたのです」

「大伴氏は・・・家持の代で取りつぶされたのですか」

「いいえ、家持の死後も大伴の名はすぐには無くなりませんでした。しかし平安の御代に淳和天皇が即位した時、大伴氏は『大』を削られ、『伴』となったのです」

「氏の名を半分に削られるとはどうした訳でござりますか」

「淳和天皇は桓武天皇の第七皇子でしたが、親王であった頃の名は大伴親王でした。その親王が即位されたので、天皇の先の名と同じでは畏れ多いというのが理由です」

「・・・」

「やがて応天門の変が起きると大納言伴善雄は火付けの罪に問われ、一族と共に伊豆に流されて血脈は絶えました・・・実は、家持はやがて来る一族の滅亡を感じ取っていた節が見えます」

  久方の、天の門開き、高千穂の、岳に天降りし、皇祖の、神の御代より・・・我が大伴氏は、ニニギノミコトが高千穂に天孫降臨なさった時以来皇祖に仕え、神武天皇に従って国々を平定し、歴代の天皇をお守りしてきた名誉ある一族なのだ。この大伴の名を絶やすようなことがあってはならぬ・・・家持は大伴古慈斐が聖武天皇誹謗の罪を得て出雲守を解任された時、一族の危機を予感して詠んだのです・・・果たして予感は現実となりました」

「・・・」

「家持の悲劇の始まりは、さきほどの・・・愛しきかも皇子の命のあり通ひ見しし活道の道は荒れにけり・・・から始まりました。家持は親王の側近でした。安積親王は聖武天皇の皇子でしたが、光明子の基皇子が皇太子でしたので天皇の地位には遠いと思われました。ところが基皇子は一歳に満たずして夭折したので突然安積親王が皇太子の第一候補となったのです。ところが思いも寄らぬ事が起きました。異母姉で光明子の娘の阿部内親王が皇太子になってしまったのです。男子の皇子がいるのに、皇子を押しのけて皇女が皇太子となるのはまったく異例ですが理由は、母の血でした。

 阿部内親王の実母は藤原の血を引く光明皇后、安積親王の母は県犬養宿禰広刀自です。犬養宿禰の祖先は壬申の乱の大功労者の一人、県犬養連大伴で、大海人皇子が追っ手を逃れて鸕野讚良皇女らと吉野山中を徒歩で逃げる途中、一行に追いつきました。彼は馬と輿を用意していたので皇子と妃はこれに乗り、危機を脱したのです。またこの時、家持の祖先である大伴吹負は大和古都を急襲して大和全域を制圧して大海人皇子を勝利へと導きました。こうした事を考慮すると、県犬養宿禰広刀自の祖先は輝く過去の栄光を持っていたのです。けれども当時権力の座にあったのは、疫病を生き抜いた不比等の孫の藤原仲麻呂でした。藤原と無縁の安積親王は排斥され、やがて急死したのです」

「・・・」

「家持の不幸を決定づけたのは心の友、橘諸兄が謀反の疑いで軟禁されて死に、続いて諸兄の子、橘奈良麻呂が謀反を企てた罪で捕らえられた事です。この時家持の一族の大伴古麻呂・大伴兄人なども長屋王の遺児・安宿王・黄文王獄と共に獄に繋がれ、激しく拷問されました。罪状は次のごときものでした。

一・紫微内相藤原仲麻呂暗殺を企てた罪

二・大炊王〈後の淳仁天皇〉の地位を奪おうとした罪

三・天皇御璽と駅鈴を奪い、孝謙天皇を廃して、長屋王の皇子・安宿王・黄文王などを天皇に立てようとした罪。

 拷問の末、鑑真を遣唐使船に乗せて渡海させるのに功あった大伴古麻呂は殺され、橘奈良麻呂らも獄死しました。

「・・・」

「実は家持は事件が発覚する五日前にこんな歌を詠っています」

   移り行く時見るごとに心痛く昔の人し思ほゆるかも

 そして、この歌・・・

  いざ子供狂(たは)わざなせそ天地の堅めし国ぞ大和島根は  万葉集 4487

 これは仲麻呂が罪人を杖下に打ち据えて死に至らしめた時に詠んだのです」

「・・・」 「おごり高ぶる権力者の哄笑が聞こえるようですが、その藤原仲麻呂も道鏡との争いに敗れ、孝謙天皇が崩御して光仁天皇が即位すると、それまで冷遇されていた家持は突然重く用いられて議政官にも任じられました。ところが光仁天皇が崩御するとたちまち氷上川継謀反に荷担した疑いで追放されたのです・・・幸い冤罪であったとして罪を解かれ、陸奥按察使鎮守府将軍として陸奥に赴任して家持はそこで亡くなりましたが、その埋葬も終えないうちに、再び謀反罪を負うことになりました。桓武天皇の側近として長岡宮造営の先頭に立っていた藤原種継暗殺の首謀者が家持であったという事実が発覚したというのです。家持は生前の地位を剥奪され、墓を暴かれて、骨は隠岐に流されました・・・万葉集という国の宝を後世に残した人物が、何故にこれほどの悲運に遭わねばならないのか、私には神慮を図りかねますが、黙っていることも出来ませんので、少しばかり書いてみたのです」定家はそう言って、細い声で読み始めた。

六番目のものがたり 「カササギの橋」

 目を覚ますと、天の川の夜空から小さな声が降ってくる。

「気の毒にねえ、墓を暴かれて、行き場を失った骨が夜露にぬれてるよ」         

「あれほど大勢の女と恋をして、数え切れないほど歌を創ったのに、なぜ陰謀に加わったのだろう」

「そんなこと、知るものか」

「もう歌を作れないわね」

「自業自得だ。僕たちがせっかく架けてやった橋を一度も渡ろうとしなかったのだから、星の仲間になることなんぞできやしない」

 カササギたちが屍となった家持を見下ろして、口々におしゃべりしている。天の川は家持の死にはまるで無関心なのか、宝石をまきちらしたようにきらきら輝き、中空をゆったりと流れている。冷ややかな美しい天の川に、無数のカササギたちが羽を広げ、一列になって。天女の羽衣のように美しい橋を架けている。

〈 空は、私の死に無関心に、神々しく輝いている・・・何故神々は私を助けてくれないのだろう・・・私はこれほどの罰に値するほどの悪を為したのか・・・そんなことはもうどうでも良いことだ。だが、私がいなかったら、多くの者の名は失われていた・・・人麻呂も、赤人も、虫麻呂も、古代の雄略天皇や舒明天皇の御歌もまた、私は丹念に選び取った。もしも私がそうしなければ、何もかも塵と消えていたのだ。しかし私の「万葉集」はどうなったろう・・・大伴は絶える・・・だから私は桓武帝の弟君早良親王にお預けした。親王様なら後世に伝えてくれるだろうと信じたからだ。ところがまさか・・・早良親王様が、藤原種継と反目し、桓武帝のお后の憎しみをかって死を命じられようとは・・・

 何もかもがむなしい。すべてが消えて行く。数え切れない人々の喜びと悲しみとを詠った万葉集が、私の死と共に消えて行くのだ 〉

泡沫(みつぼ)なす仮れる身ぞとは知れれども

なほし願ひし千歳の寿(いのち)

 美しい女が歌いながらカササギの橋をゆらゆらと渡っている。女は橋のなかほどまで渡ってくると、立ち止まってカササギの羽を長い綱に編んで、家持のほうにゆらゆらと垂らした。天空から下りてくる細い鳥の羽の綱は夜露にぬれて、星の光を銀の鎖のように宿している。

 夜風が吹いて、綱から玉のような露がさらさらと降ってくる。無数の玉の露は声となってひそかにささやきながら落ちてくる。その玉の露と共に、女の声が降ってくるようだ。

 玉の緒を沫緒に縒りて結べれば

 ありて後にも相はざらめやも

「ああ、その声は、紀郎女(きのいらつめ)」家持は手を伸ばした。けれど彼の手は凍えて動かなかった。女は家持を悲しげに見下ろした。

「あれほど私が恋いこがれて胸を痛めたあなたが、そのようなお姿で横たわっておられるとは。さあ、どうか、私が編んだ綱を頼りに、この橋まで上って来て!」

「どうしてそんなところまで上れようか」

「きっと上れます。さあ手を伸ばして」

彼女の声に励まされて、家持は凍える手を伸ばし、糸よりも弱々しく揺れる鳥の綱をかんで、身体を宙に浮かべた。カササギたちががやがやと騒いで鳴いた。

「どうせ途中で墜ちてしまうさ」

「綱が切れてしまうぞ」

「それより先に、手が凍えるにきまってる」

 カササギたちが騒ぎ立てるのを、郎女は睨みつけた。

「あの方は私の大切な人。私はあのお方をどうしても助けたい」

 すると、近くにいた年老いたカササギがきっぱりと答えた。

「あの男はあなた様にはふさわしくはありません」

「なぜ」

「あの男には不運がとりついている。それにあの男は自分の墓を暴かれ、骨を島流しにされた本当の理由も知らずに居る愚か者ですからな」

「本当の理由・・・謀反の他にござりまするのか」

「ありますとも・・・大伴吹負(ふけい)でござりますよ」

「吹負・・・でもそれは百年も昔の先祖ではござりませんか」

「そうですとも。しかし、もし吹負が味方しなかったら大和の豪族は近江朝廷を率いていた大友皇子に味方し、大海人皇子は大敗していたでしょう。さすれば天智天皇の立てた大津の都は大友皇子・弘文天皇に受け継がれ、天智天皇の皇子たちは百年もの間冷や飯を食わされることはなかった。ところが天武天皇の皇系は天武・持統・文武・元明・元正・聖武・孝謙・称徳と続き、終に道鏡が現れ天皇武天皇の皇系は運が尽きたので、ようやく光仁天皇が見いだされて皇位に就いた。次いで桓武天皇が即位されて天智天皇の皇系が復活したのですから、大変な回り道をしたものです。しかし思えばこれもそれも、吹負が天智天皇の遺言を裏切って大海人皇子に味方したからで、家持はその大罪人吹負の四代の末裔なのですから、厳しく裁かれて道理です」

「そうですとも、長老様のお言葉の通りです。あれもこれも、大伴家の報いなんです。それなのに、あなた様はなぜ奴を救おうとするのですか」

 カササギたちががやがやと騒ぎ立てると、紀郎女(きのいらつめ)は袖をし、鳥どもを黙らせた。

「おまえたちは、あの方の苦しみを何も感じないのですか。あの方は生まれつき、政治には向いておられなかった。恋と歌の中に生きるのがふさわしかったのです。ところが、由緒ある大伴という家に生まれたばかりに、あの方はいくつもの顔を持たなければならなかった」

 紀郎女の白い顔が星明かりにおぼろに浮かぶ。かささぎたちは少しだまっていたが、年老いたカササギがやおら口を開いた。

「あの男が悩んでいたかどうか、私どもにはどうでも良いのです。ただ、私どもが快く思わないのは、あの男は、恋でさえ、一筋にはなれなかったことです。あなたさまがあの男を「戯奴(わけ)」とよび慣わしていた時も、あの男は心はいつも定まらなかった。あなたは覚えていますか。合歓の花の歌を」

「憶えていますとも。あのころ私たちは誰にも邪魔されず、ただひたすらに想い合っていた。昼は咲き夜は恋ひ宿()合歓(ねむ)の花 君のみ見めや戯奴(わけ)にさへ見よ ああ、あの方しか私には見えなかった」

「でもあの男はあなたに夢中になりながら、同時にひどく臆病でしたよ、あの男の歌がその証拠です。」カササギはしわがれた声で歌った。

 吾妹子(わぎもこ)形見(かたみ)合歓木(ねむ)は花のみに

咲きて蓋しく実にならじかも

「結局ふたりの思いは実に結ばないのだな、とあきらめている、そんな男なんです」

「そうではないの、あの方は心の中で、いつも私だけといることを望んでいる。あの方は私が百歳になって、腰が曲がってしまっても、そんなことはかまわない、私の恋心はいやましにますばかりだと言ってる。

 百年に老い舌出でてよよむとも 吾は厭はじ恋はますとも

 

 彼女が家持の歌をこう歌うと、カササギたちは霜のつもった羽をうち鳴らしてカタカタと笑った。

「何とひどい歌だ」

「奴はあきれた愚か者だ」

「そうだ、愚か者だ」カササギたちは羽を打ってどよめいた。

「今どうすることも出来ない奴に、百年の恋などできようか」

「牽牛織女の二人と比べると、牛の歩みにも遠く及ばぬ」

「藤原の男どもと比べて、大伴の者たちは大岩の裂け目に吹き飛ばされて枯れてゆく秋草のようだ」 

 カササギたちはまた羽を打って夜空に霜をまき散らした。とその時、一羽のカササギが叫んだ。

「見ろ、あの男が上ってくるぞ」

「ほんとうか」

「これはどうしたことだ・・・途中で息絶えると思っていたのに」

「もう半分ほども上ってきた。頭を霜で真っ白にして、手は霜に凍えたスズシロのように細りながら、こっちへ近づいてくるぞ」

 カササギたちは羽をばたばたさせながら家持を見下ろしている。天の川は鳥たちが羽ばたきするたびに、砂金のような霜を空いっぱいにまき散らす。

 家持は細い玉の緒に縋りながら夜空に向かって凍った息を吐いた。・・・どこまで上って行こうとも、この綱は尽きるところがない・・・やがて私は力を失い、空の彼方に流れ星のように落ちていくのだ・・・何もかもが空しい、どこまでも冷たい・・・そして、なんて暗いんだ・・・家持は細い綱に縋りながら、広大無辺の夜空を呆然と眺めた。  

 かささぎの渡せる橋に置く霜の  白きを見れば夜ぞふけにける