現代人と古事記 毛筆絵による神話あらすじ解説
目次
神話のあらすじ
天地のはじまり → 高天原に三柱の神々の出現 → 神々身を隠す → 独り神の出現 → 独り神たち身を隠す → 5組のペアの神々の出現 → イザナキ・イザナミが選ばれる → 神々、二人に国土を造るように命じる → イザナキ。イザナミ、天の浮橋から塩の海に矛を差し入れる → オノゴロ島の出現 → イザナキ・イザナミ、結婚 → 蛭子の誕生 → 葦舟に入れて蛭子を流す → なぜ良い子が生まれなかったのか、天の神々に聞きただす → 神々の誕生 → イザナキ・イザナミの喜び → 火の神の誕生 → イザナミ子宮を焼かれる → 生産の神、土器の神、粘土の神、食物を司る神の誕生 → イザナミの死 → 黄泉の国へおちる → 夫イザナキ、妻イザナミを取り戻しに黄泉の国に下る → 黄泉の国のイザナミ、ヨモツヘグイをしてしまったので、鬼になっている → イザナミ、夫に決して見ないようにと頼む → イザナキ、妻の変わり果てた姿を盗み見る → 恐ろしい姿になっている妻に驚きイザナキは一目散に逃げ出す → 妻イザナミ、夫に捨てられた悲しみと夫の裏切りに対する憎悪によって狂気に陥り、地獄の醜女たちに、夫を捕らえるように命じる → イザナキ、命からがら逃げ出し、妻を千曳の岩で黄泉の国に閉じ込める → 現世に戻ったイザナキ、川で禊をする → 様々な神々が生まれた後、左目からアマテラスが、右目からツキヨミノミコトが、鼻からはスサノウが生まれる → スサノウは海を治めよと命じられた事に腹を立て、泣き騒いだため、国土が荒れ果てる → イザナキ、死す → スサノウ、姉の治めている高天原を奪い取ろうとこころみる → アマテラスの応戦 → スサノウとアマテラス、ウケイによってどちらが高天原を統治するにふさわしい資格を持っているか占う → スサノウの持ち物からは三人の海の女神が、アマテラスの勾玉からは五人の勇ましい戦いの神々が生まれる → スサノウの勝利 → スサノウの暴虐 → 万の災いが巻き起こる → アマテラス、天の岩戸に隠れる → 天地が暗黒となる → 八百万の神々、相談してスサノウの追放を決定する → スサノウ、髪の毛、爪を切られ高天原から追放される → スサノウ出雲の国で八俣の大蛇を退治し、クシイナダ姫と結婚 → 日本最初の和歌を詠む「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を」 → スサノウ建国の王となる → スサノウの子孫に大国主命が生まれる → 大国主命様々な試練の後に大王となる → アマテラス、大国主命の国を見てこれを己のものにしようとして征討軍を派遣する → 長男のアメノオシホミノ命、大国主命を恐れてたたかわずして引き返す → 次男のアメノホヒノ命、大国主命に媚びへつらって行方不明になる → 将軍アメワカヒコ、大国主命の娘をめとりアマテラスを裏切る → 鹿島の神、タケミイカズチの神を派遣 → タケミイカズチの神、大国主命を屈服させる → アマテラスの孫 ニニギノミコト国土に降臨する
神話のメッセージ その1
- この世は不条理に満ちている。神でさえ、思うように生きることはできない。
- その象徴の第一が蛭子である。
- その象徴の第二が火の神の誕生である。
神話のメッセージ その2
- 唯一神の否定
- 独り神たちが、次々と身を隠す理由
- この世に存在する、ということは関係である
- 関係の基本は男女である
神話のメッセージ その3
- 存在するものは変容するという思想
- 世界の神話の中に、古事記の神話の神々ほど決定的な神格の変容を遂げる神々は存在しない
- 日本神話の神々は、世界に類例をみない独特の思想と哲学に基づいた神である
変容する神々1
- 神々の母イザナミ ⇨ 黄泉の国の鬼となる
- イザナミの夫イザナキ ⇨ アマテラス、スサノウなどの神々を生む
- 暴虐神スサノウ ⇨ 出雲建国の大王となる
- スサノウに敗れたアマテラス ⇨ 出雲の征服者となる
- 奴隷のように無力な神大国主命 ⇨ 出雲の国の大王となる
変容する神々2
•イザナミ 全ての神々、国土の女神 → 黄泉の国の鬼 → 死をもたらす黄泉津大神となる
変容する神々3
イザナキ イザナミの夫としての神(男神)
- → 黄泉の国に下る
- → 黄泉の国から逃げ帰る
- → 川で禊をする
- → 突然、男神であったはずのイザナキがアマテラス、スサノウなど、多くの神々の母神となる
変容する神々4
イザナキの息子スサノウ 暴虐神
- → アマテラスと高天原を争う
- → 高天原をのっとる
- → 独裁者として振舞う
- → 八百万の神々に追放される
- → 出雲に流れる
- → 八俣の大蛇を退治し英雄となる
- → 出雲建国の王となる
変容する神々5
大国主命 八十神たちに奴隷のようにこきつかわれる弱弱しい神
- → ウサギを助ける
- → ヤガミヒメを許婚とする
- → 八十神の嫉妬
- → 謀にあって殺される
- → 黄泉の国へ
- → スセリヒメとの出会い
- → スセリヒメと結婚
- → スサノウ、大国主命に数々の試練を与える
- → スセリヒメの助けで大国主命、危機を乗り越える
- → 地上に戻り、八十神を平定し、大王となる
古事記からのメッセージ その4
- 国家の独裁からの解放と共和制確立の思想
- 古代における専制政治の悲劇 → 古事記・中下巻に詳細に記されている
専制政治からの脱却
スサノウの追放劇
- 天のヤスカワラでの神々の合議
- 思金神の登場
- スサノウを死刑にしなかった理由(火の神を殺したことからの教訓)
古事記からのメッセージ その5
- 人間を根本的に救うのは歌であるという思想
- 古事記、日本書紀には数多くの歌が収載されている。国史として編纂された書物にこれほどの歌が見られる例は、ほかにない。
- 古事記に見られる、このような思想が後の万葉集、古今集、その他の勅撰和歌集を生み出したものと思われる。